都市部から地方への転職を考える場合、現在の住環境内で転職するのとは違った苦労があります。情報収集のための移動時間やコストがかかったり、生活スタイルも大きく変化することになります。

そのため、実際に転職した後で「イメージと違った…」と後悔しないように、地方転職を成功させるためのコツを6つ紹介します。

地方転職の良さとは

まずは地方へ転職することでどのようなメリットが得られるのか、整理します。

生活費を下げられる

一般的に、都会での生活に比べて田舎での生活の方が少ない生活費で暮らすことができます。最も大きな要因は家賃でしょう。同じ部屋数・広さでも、日本の首都である東京都を含む関東地方とその他の地方では1.5倍から2倍違うということがあります。

2018年総務省統計局の住宅・土地統計調査(住宅及び世帯に関する基本集計) にまとめられた都道府県別の1か月の住居費を比較すると、大きく違います。

ファミリーの場合は、都会より更に家賃を軽減出来る可能性があります。地方であれば一軒家の賃貸も多いですし、都会の半分ほどの家賃で庭と駐車スペース付きの物件に引っ越せるケースも珍しくありません。

ただ、通勤に車が必要となる場合、維持費などがかかる場合もあります。
住居以外では、新鮮な食材が比較的安価に手に入る、自治体の移住支援を受けられる等もあり、多くの場合は地方転職によって生活費が下げられるでしょう。

引用元:総務省統計局|平成30年住宅・土地統計調査(住宅及び世帯に関する基本集計)

人混みから解放される

地方だと、都会ほどの人混みはありません。日々の満員電車を苦痛に感じている、街を歩いても人だらけで窮屈さを感じている、という方は人混みの少ない地方への転職がおすすめです。地方での暮らしは都会の日常的なストレスや疲労から解放された生活ができます。

実際の人混みや交通量はその地域へ行ってみればすぐに確認できるので、人混みを避けたいという目的が転職理由に含まれているのであれば、就職活動や面接などの機会で訪れる際にあらかじめ確認しておくと良いでしょう。特に通勤・帰宅ラッシュ時の状況をチェックすることは大切です。

実家のサポートが受けやすい

子どもがいる場合や今後出産・育児の予定がある場合には特に実家のサポートが得られるかどうかは働きやすさの大きなポイントになります。
就職を考えている地域が地元であるなら、体調を崩したとき実家に育児・家事のフォローを頼みやすいですし、子どもが風邪を引いて幼稚園や保育園に行けないときでも仕事を休まずに済むかもしれません。

また、都会だと保育園や学童などの待機児童の数が多くなかなか預けられないということが社会問題になっています。一方、地方では都市部と比較すると待機児童が少ないエリアも多い事が厚生労働省の全国待機児童マップ(都道府県別)でも見て取れます。預け先を見つけやすいというのは大きなメリットとなります。

引用元:厚生労働省|2020(令和2)年4月1日時点の待機児童数について

地方転職の難点

地方転職にあたっては、利点だけでなく、難点にも目を向けなければなりません。

求人が少ない

人口の少ない地方では都会よりそもそも求人数が少なく、そのため職種によってはなかなか求人が見つけられないという難点があります。自分の希望に近い企業があっても求人広告を出していなかったりホームページが無い企業なども多いので、気付きにくいという点もあります。

求人の絶対数が少ないという、地方転職の実情を踏まえた上で探し方や就労条件を定める必要があるでしょう。

利便性が下がる

地方へ移住することで生活費は下げられる可能性があるものの、住むエリアによっては移住前と比較して利便性が下がる場合があります。車が必須になるかもしれませんし、遊ぶ場所は少なくなります。休日のイベントも少なくなり、ちょっとした遊びにも大掛かりな移動を要するかもしれません。

転職活動の負担が大きい

転職活動中の負担が大きくなるという難点もあります。就職を考えている地域との距離が遠いほど大変になり、移動費・宿泊費などの費用面、就労中であれば時間の確保といった物理的な制限も出てきます。
説明会や面接などにかかる時間的な負担はリモート面接等を利用し内定までの現地入りの回数を減らすなどの工夫が必要となるでしょう。

地方への転職を成功させる6つのコツ

それでは、地方転職を成功させるための具体的手法、コツについて見ていきましょう。

現地の情勢を把握する

まずは地方転職フェアに参加してみる、地方都市が出店しているアンテナショップに行ってみる、現地に一度行ってみる等して、下調べをしっかりと行うことが重要です。

通勤や普段の生活を想定して住居、勤務候補地のイメージを固められるかどうかが鍵となります。
ただ、自力で調べられることにも限界はあります。下調べに注力し過ぎるとなかなか転職活動は進みませんので、地方に詳しい転職エージェントに相談してみるのもお勧めです。転職候補先に詳しいプロの支援を受ける事で移住後の勤務イメージを効率よく具体的に描く事ができます。

地域を絞り過ぎない

地方だと都会ほど多彩な求人はありません。そのため勤め先の立地について、駅からの距離など都会で探すときと同じような条件で地域を絞ってしまうとなかなか見つけられません。
企業によっては車での通勤を前提に考えている場合もあるので、就業先の立地や住居の候補地を無理に駅近くに設定する必要はないと言えます。

現地の知り合いを頼ってみる

人とのつながりに重きを置く地域であれば、求人広告を出さず紹介中心で人材を採る企業も少なくありません。現地で住んでいる知り合いがいる場合、転職先を探している事を伝えておくと合いそうな企業があった際に紹介してもらえる事もあります。
紹介によってすぐ採用とならなくても、優良な企業を見つけるきっかけになりやすく、転職活動を円滑に進められるという利点もあります。

リモートワークを導入している企業を探す

これまでとは少し違う観点から求人情報を探してみましょう。
リモートワークを導入している企業であれば通勤時間がネックになることもなくなります。
特にフルリモートワークを徹底している企業なら日本全国どこでも住めることになります。地方移住の恩恵も享受できるかもしれません。

リモートワークを利用して地方移住を考える場合には、オフィスへの出勤の有無、出勤の頻度などを事前によく確認しましょう。職種によってはリモートワークができないこともありますが、職種にこだわりがない場合、「リモートワークを活用できる」求人を探してみてもいいかもしれません。

地方ならではの仕事を探す

地方への転職ならではの仕事を探すのもおすすめです。

例えば、一次産業は自然豊かなエリアの方が盛んです。農業や林業、漁業などが挙げられます。深刻な後継者不足から移住・就労支援を行う自治体もあります。

また、日本では少子高齢化が地域に関わらず全国的に深刻です。そのため、医療や介護の分野は都道府県別求人数等の実績 (出典:公益社団法人日本看護協会)を見ても地方でも求人数は多い傾向にあります。専門的な資格を要するケースもありますが、これらの分野は比較的勤め先を見つけやすいと言えるでしょう。

転職先としての候補に、今後ますます人手不足が予測されるIT系はどうでしょうか。様々なサービスやシステムがデジタル化されていき、それに対する対応が求められる現在、IT業界は成長が見込める分野の一つです。また、居住エリア関係なく従事しやすいという特徴があります。リモートで働きやすく、居住エリアだけを地方に移すということもできるかもしれません。

引用元:公益社団法人日本看護協会|都道府県別求人数等の実績

UIターンを支援する機関を利用する

地方転職を成功させるコツとして最後に挙げられるのは「UターンやIターンを支援している機関・サービスを利用すること」です。特に地方では働き手や移住してくれる人を強く求めています。人がいなければ経済が活性化しないなど、様々な背景があります。
そこで、各地方自治体や商工会議所などによる地方転職あるいは移住を支援するサービスの情報発信が活発にされています。現地に住んでいないとなかなか得られない情報を提供してくれたり、現地の情況を教えてくれたりなど、就職のみならずその後の生活のためにもなることを教えてくれるでしょう。

また、厚生労働省による「地方就職等支援事業」や「農業等就職促進支援事業」などもあり、国もUターンIターン支援を行っています。

上記に加え、民間のサービスでは地方に強い転職エージェントに相談し現地の情報を得たり、希望の条件に合う企業に取り次いでもらったりするのも良いでしょう。
自己判断のみでは得られない視点も見つかるはずです。

地方転職を成功させるためのコツをいくつか挙げましたが、最重要なのは何といっても『情報収集』。地域別の特色を把握するためにも、今回紹介した方法を活用しながら情報収集をし、仕事以外の時間も含めた生活のイメージを固め、ぜひ地方転職を成功させてください。

引用元:厚生労働省|地域雇用対策